庭づくりをスタートする際、多くの初心者が「植え込み」と「植栽」という用語の違いに戸惑います。どちらも植物を配置する行為ですが、目的や手法、管理方法が大きく異なり、使い分け次第で庭の印象や手間に大きな差が生まれます。
本記事では、それぞれの特徴をわかりやすく整理し、実践で役立つコツや具体例を交えて解説します。
植え込みと植栽の用語をざっくり整理
用語 | 意味 | 代表的な場所 | タイムスパン | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|---|
植え込み | 花壇・生垣など限定スペースに草花や低木を密集させ、装飾性を高める技法 | 公園入口・住宅の玄関先・ベランダプランター | 短期的(季節ごとに植替え) | 花数が多く華やか / 初期コストが低い | 手入れ頻度が高い / 季節ごとにコストが発生 |
植栽 | 庭全体・街路・施設内緑地に木本類をバランス良く配置し、長期的に育成管理する行為 | 街路樹・商業施設の外構・個人邸の庭・公共緑地 | 長期的(年間〜数十年計画で管理) | 環境改善 / 資産価値向上 / 管理サイクルが安定 | 初期費用が高い / 計画変更が難しい |
植え込みと植栽の違いを押さえるコツは、
- 空間の広さ:ピンポイント vs. 広範囲
- 期間:季節装飾 vs. 長期育成
- 目的:見栄え重視 vs. 成長・機能重視
- メンテ頻度:こまめな植替え vs. 定期的な剪定
- 環境効果:短期的彩り vs. 温熱・生態系の長期改善
ワンポイント:寄せ植えなどのコンテナガーデンも広義では「植え込み」に含まれますが、地植えと比べて移動が容易なため、レイアウト変更の柔軟性が高いのが特徴です。
初心者向けの植え込みと植栽の基本
植栽とは何か?
- 定義:樹木・低木・草花を長期的に配置し、成長を見据えて管理するランドスケープ手法。日本庭園から最新のサステナブルガーデンまで幅広く用いられる。
- 目的:
- 四季を通じた景観づくり:落葉樹と常緑樹を組み合わせて年間で景色を演出。
- 日陰・風除け・プライバシー確保:リビング窓前に高木を植え夏の日射を軽減。
- 都市のヒートアイランド緩和、CO₂吸収:樹冠の蒸散で体感温度を下げる。
- 生物多様性の保全:在来種利用で蝶や小鳥が集まる庭に。
- ポイント:
- 植え付け後の “維持管理コスト” を計画段階で算出すると失敗しない。
- 根鉢サイズと最終樹高を把握し、建物基礎からの距離を確保する。
- 土壌改良:粘土質なら腐葉土と川砂を2:1で混ぜ排水性UP。
Case Study:通勤通学路にアオダモ並木を植栽→5年後、夏の路面温度が平均3 °C低下し、歩行者アンケートで「涼しい」との回答が72%に増加。
植え込みとは?
- 定義:限られたスペースに草花や低木をまとめて密植し、即効で華やかさを演出する方法。プランター・ハンギングバスケット・花壇など形式は自由。
- 特徴:
- シーズン毎の彩り:春はパンジー、夏はニチニチソウ、秋はコスモス、冬はハボタン——とリレー形式で飽きない庭に。
- ボリューム感が出やすく、初心者でも達成感アップ:苗数を揃えれば短期間で完成形になる。
- デザイン自由度:色・高さ・テクスチャを自由に組み合わせモザイク状に。
- 注意点:
- 根詰まり防止:2〜3か月ごとに株間の風通しを確認し、混み合ったら間引き。
- 土壌改良:腐葉土3割、赤玉土2割、培養土5割が汎用ブレンド。
- 水やり:表土が乾いたら朝にたっぷり、真夏は夕方にも霧吹きで葉面冷却。
NG例:同じ色・高さの花苗を一直線に並べただけだと単調になります。前景・中景・後景を作り、リズムと奥行きを意識しましょう。
植栽と植え込みの違いについて
- 時間軸:植栽=数年〜数十年単位、植え込み=数か月〜1年単位
- 植える植物:植栽=高木・中木中心(例:アオダモ、ヤマボウシ)、植え込み=草花・低木中心(例:ビオラ、シソ科カラーリーフ)
- メンテ頻度:植栽=年2〜3回の剪定+年1回施肥、植え込み=週1回の花がら摘み+月1回置き肥
- コスト構造:植栽=初期費用高め + 維持費低め、植え込み=初期費用低め + 維持費高め
- 景観変化:植栽=年単位でゆっくり変化し深みが増す、植え込み=瞬間的に華やかさを演出
植栽と植え込みの目的と使い分け
庭木と生垣の選び方
シーン | 植栽向き樹種 | 植え込み向き植物 | ベストシーズン |
目隠し | シマトネリコ・レイランディ・ソヨゴ | ツツジ・アジサイ | 秋植えが根付きやすい |
玄関先アクセント | オリーブ・シラカシ・エゴノキ | 季節球根(チューリップ等)・ガーデンマム | 春・秋 |
小スペース | ヒメシャラ・アオダモ・イロハモミジ(鉢植え仕立て) | ガーデンシクラメン・ビオラ・リシマキア | 通年(夏は半日陰推奨) |
コツ:成長速度が緩やかな樹種ほど剪定コストが抑えられ、初心者向き。
植え込みによる景観の変化
- カラースキーム:
- 同系色(例:ピンク系のみ)→統一感が生まれ上品。
- 補色(例:紫×黄)→遠目からでも際立つコントラスト。
- レイヤリング:
- 後景:ルドベキア・サルビアなど高さ60 cm以上。
- 中景:ペチュニア・ジニアなど高さ40 cm前後。
- 前景:バコパ・イソトマなど高さ20 cm以下。
- 季節リレー:
- 早春:ビオラ → 晩春:ネモフィラ → 夏:ジニア → 秋:コスモス → 冬:パンジー
- 香りガーデン:ラベンダー+タイム+ローズマリーを混植し、見た目と香りを両立。
植栽の役割とその重要性
- 温熱環境の改善:落葉樹は夏に日陰、冬に採光を確保し、冷暖房費を10〜15%削減する事例も。
- 生態系サポート:
- バタフライガーデン:フジバカマ・ブッドレアを植えてアサギマダラを呼び込む。
- バードガーデン:ナンテン・ピラカンサの実で冬場の餌場を提供。
- 資産価値向上:成熟樹のある邸宅は評価額が平均3〜7%アップという不動産調査データ。
- 心理的効果:緑視率25%以上でストレスホルモンが低減する研究結果。
「植え込み」と「植栽」の具体例
おすすめの植え込みの木とその管理方法
植物 | 特徴 | 年間メンテ | コスト感 | 相性の良い草花 |
ラベンダー | 香り+耐暑性 | 切り戻し:年2回 | ★★☆☆☆ | セージ・ユーフォルビア |
ボックスウッド | 刈込で形を統一 | 年3回刈込 | ★★★☆☆ | アイビー・ヒューケラ |
カラーリーフ(コリウス) | 色彩で季節感 | 年1回植替 | ★☆☆☆☆ | インパチェンス・カラジウム |
アジュガ | グランドカバー兼カラーリーフ | 年1回株分け | ★☆☆☆☆ | スイセン(球根) |
管理の基本:
- 元肥=緩効性肥料を深植え防止で施す。
- 根元マルチングで乾燥抑制 & 雑草防止。バークチップやウッドチップを活用。
- 開花後は早めの切戻しで株更新し、蒸れや病気を防ぐ。
- 液肥スケジュール:生育期は2週間に1回、規定の1000倍液を潅水。
人気の植栽樹種紹介(アオダモ、シマトネリコなど)
樹種 | 樹高 | 特徴 | 剪定難易度 | 価格帯(2 m株) |
アオダモ | 3–5 m | 透け感ある葉・白花・黄紅葉 | ★☆☆☆☆ | 15,000–20,000円 |
シマトネリコ | 4–7 m | 常緑・軽やか葉・シンボルツリー定番 | ★★☆☆☆ | 12,000–18,000円 |
オリーブ | 3–6 m | 銀葉で洋風外構に◎・実成りには2品種混植 | ★★☆☆☆ | 10,000–25,000円 |
ソヨゴ | 4–6 m | 雌雄異株・赤い実が冬映え | ★★☆☆☆ | 18,000–28,000円 |
カツラ | 8–12 m | ハート形葉・甘い香りの黄葉 | ★★★☆☆ | 20,000–30,000円 |
豆知識:アオダモはバット材として有名。野球ファンの庭に選ばれることも!
生垣や低木の活用法
- フォーマル生垣:キンモクセイ・プリペット・カイヅカイブキで刈込み線をくっきり。
- ナチュラル生垣:ブルーベリーやローズマリー、カシワバアジサイで食と香りを両立しながら自然風。
- 低木ボーダー:アベリア・ドドナエア・ウエストリンギアで色幅を作り、雑草抑制にも効果的。
- ミックスヘッジ:3–4樹種を交互に植え、病害虫リスクを分散。
植え込み・植栽の方法と手入れのポイント
植え込みの設計と配置方法
- ゾーニング:通路から50 cmは作業スペースを確保し、踏圧による土壌硬化を防ぐ。
- 視線誘導:玄関→アプローチ→フォーカルポイントへS字ラインで配置し、歩くたびに景色が変わる“シークエンス”を演出。
- 高さ設計:後方は60–80 cm、中段40 cm、前景20 cmでグラデーション。
- カラーアクセント:白花を要所に散らして全体を引き締める。
- 灌水設計:ドリップチューブを埋設すれば水やり負担が1/3に。
植栽における剪定と育成の重要性
- 整姿剪定:樹形を維持しつつ光合成面積を確保。枝が重なる部分を“重なり枝”“内向枝”として優先的にカット。
- 間引き剪定:風通し改善で病害虫リスク減。特にカビ類(うどん粉病・黒星病)対策に有効。
- 時期:
- 落葉樹=休眠期(12–2月)
- 常緑樹=初夏 or 初秋
- 道具メンテ:剪定バサミを70%アルコールで消毒→病気伝搬を防止。
Tips:切り口に癒合促進剤を塗ると回復が早い。市販のトップジンMペーストが手軽。
庭づくりにおける水やりと肥料の管理
季節 | 水やり頻度 | 施肥タイミング | 追加ポイント |
春 | 朝1回 | 緩効性 + 液肥スタート | 花芽形成期はリン酸強化の液肥 |
夏 | 早朝 & 夕方 | 速効性液肥を月1 | マルチングで蒸散抑制、夕方は葉面散布で冷却 |
秋 | 週2回 | リン酸多め追肥 | 冬越し準備:カリを追加し耐寒性UP |
冬 | 乾燥確認 | 施肥ほぼゼロ | 凍結防止に朝だけ灌水し、夕方は控える |
覚えやすい法則:水やり 3・2・1 ルール——春秋は3日に1回、夏は2回/日、冬は1回/週が目安。
まとめ:植え込みと植栽を賢く選んで理想の庭を作ろう
- 植え込み=短期で華やかな彩りを叶える“ファストガーデニング”。
- 植栽=長期的な景観と機能を担う“スローガーデニング”。
- キーワード「植え込み 植栽 違い」を押さえ、目的に合わせて両者を使い分ければ、
- 見た目:季節ごとに変化し、飽きのこない庭を実現。
- 機能:年々深まる緑陰と生態系で、人にも地球にも優しい空間に。
- ステップアップ法:まずはプランター植え込みでデザイン感覚を養い→成功したらシンボルツリー植栽へ挑戦→最終的に庭全体のゾーニングを計画するとスムーズ。
次のアクション:今日1時間でできるプラン — 玄関先に季節花苗3ポットを植え込み、使用感と水やりサイクルを体験しよう!
発展プラン:1か月後、シンボルツリー候補のナーサリーを見学し、気に入った樹種をリストアップしてみてください。